Splendor of Ours -the latter part-

「じゃあ、俺たちは帰ります。元気でなフルート」
「ありがとう皆。また会おうね」
 全てを見届けたツインビーチームは、フルートたちと再会を約束し、どんぶり島へ帰投していった。『結界』が無くなったため、フルートの力を借りずとも出ることができる。
 テラスに残された四人。突然フルートが声を上げた。
「ワンダー将軍、最長老(エルディスト)さまと大臣たち、まだ塔の地下に幽閉してるんじゃないですか? 早く出してあげて下さい!」
 フルートは喚き散らし、ワンダーの立派な揉み上げを力任せに引っ張り催促した。
「こら引っ張るな! 地下牢の鍵ならここに――」
「いいえ、鍵だけじゃ駄目です。一緒に来て下さい。是非来て下さい。絶対来て下さい!」
「わかったわかった! わかったから髪を引っ張るな!」
 その異様な迫力に押され、ワンダーは渋々フルートに従い、テラスを後にした。去り際、フルートはちらと振り向き、メロディとエースに悪戯っぽくウインクしていった。
 そして、テラスにはメロディとエースの二人だけが、取り残された。

 § § §

 訪れた気まずい沈黙に耐えかねて、先に切り出したのは、エースだった。
「メロディ女王、ナンセンス大公に洗脳されていたとはいえ、数々の無礼、到底許されるものではありません。どうか私を罰して下さい」
「罰? 何故です? 私はお礼を言いたいくらいなのに」
 エースは首を傾げた。何のことだ? 思い当たる節がない。
「ナンセンス大公に襲われたとき、助けてくれたでしょう」
「あれは……当然のことをしたまでです」
「それにあの時、私のこと『メロディ』って呼んでくれたでしょう?」
 途端に、エースの顔に火がついた。しまった、憶えていたか! あの状況そのものがどうしても許し難くて、つい口をついて出てしまったのだが、もう遅い。
「申し訳ありません!」
「謝らないで。あの時あなたが助けてくれなかったら、今頃どうなっていたことか……それに……」
 今度はメロディの頬に朱が差した。
「嬉しかったの……名前で呼ばれて……女王だからじゃなく、一人の女の子として助けてくれたんだって……」
 エースは何か言おうとするが、上手く言葉が出てこない。何を言っても言い訳や嘘になりそうで、すぐに見透かされてしまうような気がして……だから、エースは覚悟を決めた。
「例え何があろうとも、私はこれからもずっと傍にいます。身命を賭して、お守りします」
 途端に、メロディの表情が曇る。そんな言葉を聞きたかったわけじゃないのに――やはりエースにとって、私は女王でしかないの?
 一呼吸置いて、エースは続けた。
「一兵卒としてでなく、一人の男として」
 恐いくらいに真剣な声。真剣な眼差し。
「エース……」
 ぽろり。メロディの眦(まなじり)から、涙が一粒零れた。
「え? あ、いや、その……」
 まさか泣き出すなんて――経験に乏しいエースは、今度こそ言葉を失った。
「ごめんなさい。違うの。とても嬉しいの……」

 § § §

 ひゅぅ――不意に、微風がテラスに吹き付けてきた。気がつけば、もう日も暮れかかっている。
「……宮殿に戻りましょう。夜風は身体に障ります」
 エースは手を差し伸べた。メロディはその手を取る。二人は歩き出した。
「……私、これから、巧くやれるかしら?」
 ふとこれから先の不安に駆られたメロディは、エースと繋いだ手に少しだけ力を込めた。
「成さねばならないことは山積みです。しかし――」
 不安を払い励ますように、エースもまた、メロディと繋いだ手に少しだけ力を込めた。
「あなたならきっとできます、メロディ」
「……うん。ありがとうエース」
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