Splendor of Ours -the latter part-

 一方のメロディたちは、ツインビーたちの活躍によって外壁の直撃は免れたが、支えきれなかった瓦礫の一部からメロディを庇って、ワンダーが瓦礫の下敷きになっていた。
「小父様!」
「女王陛下……今なら逃げられますぞ。早う行きなされ」
「何を言うのです? そんな世迷い言は許しません。手伝ってエース!」
 メロディは自分より大きな瓦礫と格闘を始めたが、エースは苦悶の表情のまま動かなかった。ナンセンスによって植え付けられた悪意と本来の心が、エースの中で未だに鬩(せめ)ぎ合っ
ているのだ。
 エースも苦しんでいる、頼っては駄目、ここは私が何とかしなくては――ワンダーにのし掛かる瓦礫に一人立ち向かうメロディの正面に、一つの影が立ち上がった。
「こうなったらやけくそザマス! お前だけでも道連れにしてやるザマス! ふしぎの国もこれで終わりザマス!」
 全身に火傷を負って異形と化したナンセンスだった。断末魔に近い蛮声を上げ、ナンセンスは爛れた肉体を引きずり、メロディに襲いかかった。
「いかん! エース、陛下を連れて逃げろ!」
 しかし、自分のことで手一杯なエースは動けない。そしてメロディも恐怖に足がすくみ、悲鳴さえ上げられなかった。
「大人しく『歌』を私に教えていれば、全て上手くいったものを……何もかもお前の、王家の所為ザマス!」
 見当違いの恨み言を呟きながらメロディに迫るナンセンス。
 その爛れた指先が白い首筋に触れた瞬間、メロディの恐怖は絶頂に達した。
「いやああああああぁぁっ! 助けてエース! エース!!」
 乙女の無垢なる叫びが、青年の心を呼び醒ました。
「メロディに触るな!」
 エースの瞳に、強い意志の光が宿った。手にした銃をナンセンスに向け、躊躇いなく引き金を引く。
 ターー……ン……
 そして影は沈黙し、二度と立ち上がることはなかった。
「エース!」
 メロディは駆け寄り、エースの胸に飛び込む。
「め、メロディ女王?!」
 突然のことにエースは赤面し戸惑うが、怯えて震えるメロディを見て、
「……もう大丈夫です。何も心配は要りません」
 静かに受け止めることにした。
「何をしておるエース? 陛下を連れて早く逃げろ」
「義父上!」
 エースは慌ててメロディから離れ、ワンダーにのし掛かる瓦礫を除け始めた。メロディも手を貸すが、捗(はかど)らない。
「儂に構うな。ハープを持って早く行け!」
「しかし、それでは義父上が……」
「陛下をこれ以上危険に晒すつもりか? 一刻も早く安全な場所へお連れするのだ」
 戦場では情は捨てよ、例え親子の情であろうとも――ワンダーの教えの下、エースは断腸の思いで決断する。
「……わかりました義父上」
 エースは手近に転がっていた【しあわせのハープ】を取った。だいぶ煤けてしまっているが『弦』は奇跡的に一本も切れていない。
「参りましょうメロディ女王」
 しかし、メロディは脱出を渋った。クーデターの共謀者として今回の事態を招いた張本人ではあるが、幼い頃からよく知る小父様を見捨てて行くなどできなかった。梃子(てこ)でも動きそうにないメロディにワンダーは、
「陛下……我が愚息に、ひいてはこの国に、広い世界を、新しい可能性を、見せてやって下さい……それこそが我が宿願、最期の願い……どうかお聞き届け下さい……」
 そう言ってエースに目配せする。エースはメロディの手を取り、走り出した。
「待ってエース! 小父様が――!!」
「いいから早く!」
 メロディの哀訴も聞き入れず、振り向くことなくエースはメロディと共に宮殿を脱出した。

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