Splendor of Ours -the latter part-

 当然のことではあるが、宮殿の外では王立消防隊を始め宮殿に勤める者たちによって、消火活動が行われていた。しかし、折からの強風に阻まれ、難航していた。
 先に脱出していたライトたちは、ツインビーやメロディたちを救出するために王立消防隊と組んで救助隊を編成し、宮殿に再突入しようとしていた。その矢先、誰かが叫んだ。
「女王陛下だ!」
 燃え盛る宮殿の中から走り出てくる二つの煤けた影。メロディとエースだ。救助隊はまず二人を保護し、安全なところまで誘導した。
 ここまで来ればもう大丈夫だろう――エースはメロディに【しあわせのハープ】を返すと、すぐに立ち上がり宮殿に引き返そうとした。
「いけませんエース!」
 メロディは腕に縋り付いて引き止めるが、冷静さを欠き我を失ったエースは力任せに振り切ろうとする。
「行かせて下さい、メロディ女王!」
「いいえ、行かせません! あなたまで喪ったら、私はどうすればいいのです?」
 エースの腕の力が、僅かに抜けた。わかってくれたのかしら? 縋る手を緩めるメロディ。だが、その隙をついてエースは縋る手を振り切り、走り出した。
「戻りなさいエース! お願い行かないで!」
 エースの背に哀願するが、その声は届かない。
 宮殿の入り口に差し掛かったところで、三つの大きな丸い影がエースの行く手を阻んだ。
「退け!」
 しかし、影はエースの気迫にも全く動じず、
「▼慌てないビ。探しているのはこの人だビか?」
 そう言って、大きな丸い影――ウインビーは腕に抱いたもう一つの影を指し示した。
「義父上!」

 § § §

 酷い火傷と重傷を負っていたワンダーは、すぐさま王立病院へ搬送された。エースとメロディ、そしてツインビーチームの面々も付き添う。
 診断の結果を医師の一人が告げる。
「全く予断を許さない状況です。一命を取り留めたとしても、重度の障害が残ることは覚悟しておいて下さい」
 そして、手術が始まる。待っている間、ライトはツインビーたちに救出時の状況を聞いた。
「★ライトたちが脱出した後に、生命反応がまだ一つ残ってたんだビ」
「▼それで、何とか助け出そうってことになったビ」
「●比較的ベルパワーが残っていた僕が外壁を支えて、ツインビーが瓦礫を除けて、ウインビーが救出したビ。僕一人で支えるの、きつかったビ」
「★で、脱出しようとしたら、エースがわざわざ中に戻ろうとしてるから吃驚したビ」
「……そうだったのか……すまなかった。君たちには感謝してもしきれないな……」
 エースは力なく礼を述べたが、すぐに深く項垂れた。肩は震え、拳は固く握りしめられたままだ。
 ナンセンスに悪意を植え付けられたとはいえ、ツインビーチームと戦いメロディに銃を向けてしまった自分への怒り、そして今、義父が喪われるかもしれないというのに何もできない無力感に苛まれていた。

 § § §

 刻々と時間だけが過ぎていく。廊下の向こうでは喧噪と混乱が続いているが、この手術室前はまるで真空空間のように静まり返っていた。
「女王様!」
 その真空空間を引き裂いて、掌に乗るほど小さな影が、メロディの膝に飛び込み、大声を上げて泣き出した。
「フルート?! どうしたのその姿は?」
 身体のあちこちに包帯が巻かれている痛々しい姿に、メロディは仰天した。嗚咽で言葉にならないフルートに代わり、ライトが説明する。ナンセンスに床に叩き付けられたこと、宮殿を脱出してすぐに病院へ連れて行ってくれるように、王立消防隊にお願いしたことを。
「……私、さっき目が覚めたんです。そしたら、女王様が来ているって聞いて、いてもたってもいられなくなって……」
「そう……有り難うフルート。よく頑張りましたね」
 メロディはフルートの髪を指先でそっと撫でた。

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