Splendor of Ours -the latter part-

End and beginning~終わりと始まり

 すっかり元通りになった、宮殿の謁見の間。
 そこで改めて、メロディとツインビーチームとの謁見が行われた。今更謁見も何もないだろう、とライトたちはすぐにでも辞するつもりだったが、見届けてほしいことがあるという、メロディの強い要望で実現したのだった。
「ツインビーチームの皆様、本当に有り難うございます。そして、多大なご迷惑をおかけしたことを、深くお詫び申し上げます」
 メロディは玉座から立ち上がり、国を代表して感謝と謝罪を述べた。そして脇に控えていたエースから【しあわせのハープ】を受け取ると、ライトたちを伴いテラスに向かった。エースとワンダー、フルートも付き添う。
「皆様がいらっしゃるどんぶり島には【しあわせのハープ】もしくはそれに近いものはありますか?」
 歩きながら繰り出されたメロディの唐突な質問に、顔を見合わせるライトたち。
「いや、ない……と思います。聞いたこともないです」
 曖昧な回答であったが、メロディは満足したようだ。
「我がふしぎの国は、建国以来【しあわせのハープ】を守ってきました。結界を張り、普段は厳重に封印してまで、その存在を隠そうとしたのです。言い換えれば、この国は【しあわせのハープ】で成り立っている、とも言えます」
 言葉の意図が理解できないまま、一行はテラスに入った。
 数日前、ここで行われるはずだった建国祭は、一連の状況を鑑みて中止が決定している。大勢の国民で賑わっていたテラス下の広場だが、今は人影もない。
「今なら何故先人たちがそこまでしたのか、よく解ります。強大な力を恐れる一方でその力に魅せられ、手放せなかったのでしょう……」
 テラスの先に立つメロディ。本来ならここで、メロディは【しあわせのハープ】を奏で、国の安泰を祈るはずだった。
「しかし今、私は勇気を持って決断し、先人たちが成し得なかったことを成し遂げます」
 メロディは【しあわせのハープ】をそっと抱きしめ、万感の思いを込めて囁いた。
「今まで、本当にありがとう」
 メロディは腕を伸ばし【しあわせのハープ】をテラスの外へ突き出した。
 手の力を僅かに緩める。

【しあわせのハープ】はメロディの手から滑り落ちた。

「!!」
 誰が予想しえただろう、メロディのこの行為を。
 その場に居合わせた誰もが、テラスの下を覗き込む。
【しあわせのハープ】はテラスの真下で砕け散っていた。
「何と……何ということを……」
 あまりのことに茫然自失となり、膝を折るワンダー。
「女王様……どうして……?」
 フルートはそう問いかけるのがやっとだ。
「…………」
 ツインビーチームは皆、言葉を失っていた。
「これが、私の決断です」
 震える声で、しかしメロディは断言した。
「今回の事件の元凶は、この【しあわせのハープ】にあります。ならば、このようなものは存在しないほうが良いのです。これが正しいことなのか、それはわかりません。けれど、これからは【しあわせのハープ】に頼ることなく、皆で力を合わせて、この国を盛り立てていきたいのです」
 エースはメロディの前に跪くと、
「女王の行為が正しいか否かは、後世の者たちが決めること。私たちにできることは、あの時ああすればよかったなどと後世の者たちに言われないよう、尽力することだけです」
「……ありがとうエース。これからもこの国のために、力を貸してくれますか?」
「無論です」
 真っ直ぐメロディを見上げ、エースは即答した。
 その時、ふとテラスの向こうに目を向けたミントは、ある異変に気付いた。
「ハープー(見て! 【しあわせのハープ】が!)」
 テラスの真下、砕け散った【しあわせのハープ】の欠片が白い光を放っていた。
 皆が見守る中【しあわせのハープ】の欠片は白い光の柱となった。光の柱は天を貫き、ふしぎの国を覆っていた厚い雲と嵐――『結界』を打ち払った。やがて柱が静かに消えゆくとともに、抜けるような青空と眩しい日差しが、雲と嵐の代わりにふしぎの国を覆い始めた。
「そうか……【しあわせのハープ】が失われたから『結界』も無くなったのか……」
「ということは、外の国とも自由に行き来できるようになったってこと?」
「めーびー(たぶん、そうだと思う……)」
「……なるほど。そうか、そういうことか……」
 ワンダーは力なく嗤った。武力などに頼らずとも、始めからこうすればよかったのだ。【しあわせのハープ】の力に魅せられ囚われていたのは、他でもない自分自身だったのだ。
「ハープが起こした最後の奇跡、ですね」
 メロディは【しあわせのハープ】が消えた空に呟いた。
「……さようなら【しあわせのハープ】……」

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