Splendor of Ours -the second part-

Engagement・I~交戦・I

 メビウスの塔から防衛軍本部に戻ると、ワンダーは不逞の輩――恐らくフルートに呼ばれたであろう他国の救援者についての詳細を聞いた。
 救援者は球形の小型戦闘機が三機、それぞれ青色、桃色、緑色の彩色が施されている。まるで玩具のような外見だが、戦闘能力は極めて高く、上陸部隊、海上艦隊ともに被害甚大。特に三機による連係攻撃は強力で、旗艦ワンダーワンダフルもこれにより撃沈、兵士たちの士気も下がる一方だという。
 表には決して出さなかったが、ワンダーは内心驚愕していた。たった三機の戦闘機相手に、一国軍が翻弄されている。これは一体どういうことだ? 諸外国の軍が強力過ぎるのか、我が軍が脆弱過ぎるのか?
 いずれにせよ、現状ではこれ以上戦線を拡大するのは困難と判断せざるを得ない。
 ワンダーはシシリア島侵攻軍に、速やかに撤退するよう指示した。今は態勢の立て直しこそ急務だ。それに、救援者が本国に侵入してきたところを、巧く挟撃できるかもしれない。
 一通りの指示を下したワンダーは、後のことを部下に任せて、本部の一角にある兵器開発研究所へ向かった。開発技師長が出迎える。
「シューティングスターの整備はどうだ?」
 挨拶もそこそこに、ワンダーは深紅の機体へ歩み寄る。
「小型攻防兵器(ルチアーノ)搭載完了、いつでも出られます。しかし……」
「どうした? 許可する、言ってみろ」
「了解(ヤー)。本当によろしいのでしょうか? 小型攻防兵器(ルチアーノ)は未だ試作段階。操縦者への精神的、肉体的負荷も大きく、掛かる影響は未知数です。実戦投入は時期尚早なのでは?」
「相手は、シシリア島に展開した我が軍を突破してきた者たちだ。これでようやく互角だろう」
 技師長の言い分は理解できる。兵器開発者としては、未完成の兵器を前線に出されることは屈辱だろう。しかし、今はそんなことに拘っている場合ではない。強力な救援者たちをここで退けられるか否かが、クーデターの成否の鍵を握っているといっても決して過言ではない。多少の危険(リスク)を冒してでも、負けるわけにはいかないのだ。
「……無論、できる限りの支援は致します。それと『彼女』のことなのですが、ナンセンス大公がかなり無理な要求をしてきてまして……」
 またか――ワンダーは内心毒突く。あの我が儘な大公のことだ、大方どうでもいいことを放言しては、技師たちを困らせているのだろう。
「なるほど。で『彼女』の完成度は?」
「八割といったところです。実質運用は可能ですが、大公の要求どおりにするには、今暫くの時間が必要です」
「わかった。大公閣下にはそれとなく言っておこう」

 それから数時間後。
 救援者たちが『結界』を突破、本土に向けて進攻中と報告が入った。
 ついに来たか、やむを得まい――ワンダーはエースを呼び出し、命じた。
「我らの計画を阻む輩が、本国に侵入した。早急に出撃し、彼奴らを墜としてくるのだ」
「了解(ヤー)」
 感情がまるで篭もっていない、抑揚のない声でエースは応じた。ハープの洗脳は確実に効果を顕していた。

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