STARTING LEGEND

 翌日。
「パステルさん、決心してくれてありがとう!」
 陽気な声とともに、エリナが書類を抱えやって来た。
「本当にいいんだねパステル?」
 シナモン博士は心配げにパステルの意思を確認した。
「大丈夫よおじいちゃん。私頑張る」
 シナモン博士を交えて契約書を交わし詳細を説明すると、次の日から早速稽古に入った。

§ § §

 稽古は想像以上に厳しいものだった。
 ボイストレーニングは発声の仕方が全くなってないと、発声時の舌の位置まで事細かに注意された。
 ダンスは新体操で多少慣れていたが、基礎から根本的に違うため一から徹底的に叩き込まれた。
 講師陣も有名人だからといってパステルを甘やかすような真似は決してせず、上手くいかないときには怒鳴り散らすことさえあった。
 部活も放課後の練習を早めに切り上げるようにはしたが、どんなに稽古が終わるのが夜遅くなっても、朝練は欠かさずに続けた。
 また、最近出番はないが、ツインビーチームに出動要請があったときはすぐに出られるように、ウインビーの整備もしていた。芸能活動より学業やツインビーチームの活動を優先することは、エリナにも契約の時に納得してもらっていた。
 ライトやシナモン博士の食事もきちんと作ったし、その他の家事もウインビーたちの協力を得て何とかこなしていた。
 疲労は頂点に達していたが、パステルは歯を食いしばって耐えた。
 初めはライトに対する意地もあったが、そんなものは程なく自分の中から消えた。その胸中にあるのはただ……
「やると決めた以上、中途半端にしないでやり遂げよう。メローラ姫もきっと見てるんだから……」

§ § §

 一方のライトはといえば、あれ以来学校も休みがち。
 元来帰宅部だったから、特に打ち込める部活もなく一日中テレビゲーム三昧。
 ツインビーの整備も、ミントやシナモン博士に任せきりで、ツインビーはやさぐれてしまう有様。
 出された食事にはとりあえず手をつけるが片付けもせず、家事には非協力的だった。
 こうして、二人のすれ違いの生活が続いた。
 たまに顔を合わせることがあっても、
「夕飯、カレー作っておくから、温めて食べて」
「おう」
 妙に気まずい雰囲気になってしまう。そして、ろくに言葉も交わせないまま、またすれ違いに戻ってしまうのだった。
 このままではいけない……そう思いつつも、時間だけが過ぎていった。

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